土呂部に残された希望を育む。新聞などで話題。「日光茅ボッチの会」

nikko-kayabocchi_02 今月、土呂部(どろぶ)地区で「日光茅ボッチの会」が立ち上がりました。新聞にもすでに全4紙で取り上げられたので、とくに県内では見た方も多いと思います。すばらしい取り組みなので、県外の方たちにも知ってほしいので紹介します。

茅ボッチの会とは?

正式に立ち上がったのは11月9日。できたてホヤホヤの団体です。実は、当サイトに登場するのははじめてはありません。 先日、キノコ刈りのときの・・・ nikko-kayabocchi_01 写真をよく見ると、茅ボッチが見えます。実はコレ、「日光茅ボッチの会」の主メンバーである飯村さん(キノコ持っている人)や竹森さんたちが、新プロジェクトを立ち上げる準備として、茅ボッチづくりに挑戦していたのです。 <関連記事>

「日光茅ボッチの会」主な目的は2つ

すごいことなのですが、内容が専門的なため、イメージがつかみにくいと感じる人もいると思います。できる限りざっくり説明します。目的は主に2つあると思います。
  • (1)希少植物を守る&育てる
  • (2)里山風景を守る&育てる
1つ1つ紹介します。

目的(1) 希少植物を守る&育てる

「希少植物」を説明するには、「半自然草原」をセットで知る必要があります。

「半自然草原」とは何か?

簡単にいえば、「人の手が加わり維持・管理されてきた草原」です。人の手が加わっているので、”半自然”がつくのでしょうね。 半自然草原は、
  • 「採草(さいそう)」・・・家の材料(茅葺き屋根)や、牛や馬のエサなどのために草を刈る
  • 「放牧(ほうぼく)」・・・牛や馬などを放して飼う
  • 「火入れ」・・・森林化を防ぐなどの目的で草原を焼く
など、人間の生活との深い関わりの中で維持されてきました。

「稀少植物」との関係

そしてこの半資源草原にこそ、希少な植物や動物たちが生きることができます。絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ、絶滅しちゃう可能性が最も高い)で有名な”アツモリソウ”をはじめとする植物や、それを食べるチョウチョなどの動物など、かつての土呂部ではたくさん見られたそうです。 草原はほったらかしにすると、やがて木が生え森になってしまいます。人が管理してこそ生きられる植物や動物がいるっていうのがポイントで、そこを対応するのが目的(1)なのです。

目的(2) 里山風景を守る&育てる

nikko-kayabocchi_03 目的(1)の結果としてできるのが、茅ボッチです。刈り取った草を茅ボッチにして乾かし、あとで牛や馬のエサなどに活用します。 茅ボッチをシンボルとする美しい田園風景は、「栃木県のふるさと田園風景100選」にも選ばれたことがあります。このような宝をこれからもずっと残す、というのが目的(2)です。

今「半自然草原」は消滅寸前。ピンチ

現在は茅葺き屋根の家もほとんどなく、牛や馬を飼う家も少なくなり、かつては全国各地で見られた半自然草原は激減。消滅寸前の危機にあるといいます。多くの研究者もこの環境を守ることの大切さを訴えています。 そしてこの半自然草原に関して、栃木県内でまとまった面積をもつ地域が現在では1つ!しかないのですが、驚くべきことに、それが日光市栗山郷・土呂部だというのです。 県内では土呂部でしか見られない植物も数種類あります。土呂部は、草原性稀少植物の宝庫だったのです。改めて、土呂部ってスゲー。でも土呂部もすでに多くの稀少植物の姿が消えてしまったし、さらにこのままほっておけば、絶滅は間違いありません。土呂部で昭和後期に132頭もいた牛は、今は4頭(1軒のみ)しかいません。 ①生活や社会の変化→②牛を飼う家が減る→③半自然草原の維持が難しい→④稀少植物がピンチだし、茅ボッチも見られなくなる この負の流れをなんとかせねばあかんです。攻略のポイントは、まず③でしょう。

「日光茅ボッチの会」代表の飯村さんについて

nikko-kayabocchi_04 もとは日光市役所に勤めていましたが、このプロジェクトののために早期退職を決意。並大抵のことではありません。そこまでして活動する場所が土呂部だなんて、胸が熱くなりました。 飯村さんと5くりの出会いは1年半以上前、当サイトが立ち上がったばかりの頃です。地元の方に教わった花を「マンサク」と紹介したところNikkoTodayというすごサイトの管理人に、「“ダンコウバイ”が正しい」と教えていただきました。 当時は「地元の人が誤解しているくらいなのに、それを一発で見ぬくとは・・・日光にヤバイ人がいる」と驚きました。そして、そのサイトの管理人が飯村さんだと知るのは、それから半年以上たってのことでした。記事には登場していないけど、西沢金山の勉強会のときもお会いしました。 <関連記事>

県内に残された希望「土呂部」

ピンチの話もしちゃいましたが、これはチャンスです。このプロジェクトにおいて、土呂部は、県内に残された最後の希望ともいえます。 半自然草原を育む活動や調査を続けることで、今はなくなった稀少植物の復活を目指します。将来的には、この自然を活用したガイドツアーなどの構想もあります。このような活動で交流人口を増やすことは、地域の活性化もつながるはずです。とても夢のある話だと思いませんか? 5くりでは、これからもこのプロジェクトを追っていきたいと思います。 <さらに詳しい情報は、新聞記事をどうぞ>
  • 「日光茅ボッチの会:採草地を守ろう 希少植物、保存へ 土呂部の採草地を継承−−設立 /栃木- 毎日jp(毎日新聞)」
  • 「土呂部の自然環境再生へ団体発足|下野新聞「SOON」」
日光茅ボッチの会 5秒コメント 土呂部歴約60年のYさんと話ました。 Yさん「ずっと土呂部で暮らしてきたけど、こんなこと全く知らなかった!」

4 COMMENTS

管理人

いいむらさん

こちらから記事アップのご連絡をしようと思っていたところ、大変恐れいります。やはり、読者からもすごい反響ですね。ここまでの決断や調整にいたるまでは、相当な苦労があったことでしょう。時間はかかるし難しいプロジェクトだと思いますが、楽しそうに活動をされる主メンバーの方たちを見てたいへん刺激を受けました。微力ながらも、これからも応援させていただければ大変うれしく思います。こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。

いいむら

誰が見ても、とてもわかりやすい説明、ありがとうございます。
土呂部の草原は生き物の宝庫です。絶える寸前の環境を元に戻すためには長い時間と多くの労力がかかると思います。皆さんの協力がないとできない取り組みだと思っています。
こうして応援してくれる5栗のブログ、とってもうれしいです。
本格的な活動はまだまだこれからです。どうぞ引き続きよろしくお願いします。

管理人

モモンガさん、ありがとうございます!
ほんとうに素晴らしい取り組みだと思います。やはりご年配の方は詳しいですよね。大変な作業で時間も根気も必要でしょうが、当サイトではこれからも活動の状況を伝えていきたいと思います。

モモンガ

素晴らしい取り組みですねー。

「半自然草原」というと日本だと阿蘇を思い出します。牛のポスターもインパクトありましたが、観光資源(観光交流)という観点からもいいと思います。

半自然草原や二次草原、栗山地域には小さいですが点在してますが、森林化が進んでいます。年配の方に尋ねるとその形跡が遠くからも見えたり、山をあるいていても、火入れの跡が残っていたりします。

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