ごいちです。2016年1月23日、川俣(かわまた)地区で4年ぶりとなる元服式(げんぷくしき)が行なわれました。また、昨年の11月29日には元服式の形式を模した高校生たちによる心縁祭(しんえんさい)もありました。
はじめて体験していろいろ思うことがありました。それぞれどういう行事なのか紹介します!
1.江戸時代から続くローカル成人式
(1)元服式とはどういう儀式?
数え年(生まれた時を1歳とし、元日を迎える度に年齢を重ねていく数え方)で二十歳の男子が行なう川俣独特の成人式です。
この時、元服した男子は川俣に住む親以外の男性と親分・子分という親子関係を結びます。
<参考>山奥の集落で、血縁関係を途切れさせないための知恵とは? 元服式
(2)次回、元服式が開催されるのはいつ?
川俣出身で次に数え二十歳の男子を迎えるのは2年後です。なのでその男子が親分を指名すれば最短で2年後にまた元服式が行なわれます。
しかし、来年元服式が行なわれる可能性も0ではありません。なぜなら数え二十歳でなくても川俣に婿養子にくれば親分・子分の契りを結ぶことができるからです。
(3)親分のタマシイを受け継ぐ子分
親分・子分の契りを結ぶと冠婚葬祭の時に重要な役割を担います。中でも親分の葬列の時に子分はタマシイと言われる霊魂の依代(よりしろ)を持ちます。
これは節のない木を削って半紙で巻いたもので位牌(いはい)と同じように大切に扱われます。これも川俣ならではの文化ですね。
(4)親分の実の子と子分はどういう関係?
実の親子のような関係の親分・子分。では親分の実の子と子分の関係はどうなるのでしょう?これは義理兄弟の関係が成立します。
例えば長男が生まれる前に親分・子分の契りを結んでいると子分が実の子の義理の兄となります。長男なのに生まれた時からお兄ちゃんがいるというのも不思議な感じですね。
元服式のあとの宴も盛り上がりました。
2.高校生と地域が新しくつながる心縁祭
昨年の11月29日に日光市社会福祉協議会さん主催のNIKKO高校生ボランティア「カワマタスマイル。」プロジェクトの中で心縁祭が行なわれました。
(1)心縁祭とはどういう儀式?
今まで何度も川俣に訪れて交流を重ねてきた高校生たち。来春卒業する高校生はそれぞれの道を歩みます。
そこで高校を卒業しても川俣のつながり住民(第二の故郷)としてこれからのつながりを誓い合おう!という儀式が心縁祭です。高校生にはお世話になった川俣住民から認定証が手渡されました。
(2)どこが元服式をイメージしているの?
心縁祭では親分・子分ではないですが川俣と高校生を結ぶ「固めの盃」が交わされます。まだ高校生なのでここではノンアルコールのお手製甘酒で盃を交わしました。
いつか成年になった時、また川俣に訪れて本当の酒を酌み交わせるといいですね。
お盆と器も元服式と同じものを使っています。
お供えに使われている食材は
①川魚(腹合わせ)
②ばんだい餅(じゅうね味噌)
③蕎麦がき
④川俣菜(漬物)
⑤けんちん汁
の5品です。川俣のお母様方が一生懸命準備しました。
川俣の人と高校生が一緒に作ったそばやボランティア活動の時に振る舞われたばんだい餅、川俣の行事でいつも作るけんちん汁など川俣と高校生にとって縁の深い料理ばかりです。
(3)互いに贈る感謝の言葉
川俣住民からは「川俣のみんなを元気にしてくれてありがとう」「潤いとパワーをくれてありがとう」など様々な感謝の言葉。
「私はそんなに話すことは…」と言いながらも、今までの感謝といつでも川俣においで、というやさしい言葉をかける姿がとても印象的でした。
高校生たちも「優しく暖かく迎え入れてくれてありがとうございます」「いつか自分の車でまた川俣に来たいです!」と感謝の気持ちを伝えていました。
「卒業してからもよろしくお願いします。」という一言が、川俣と高校生たちのつながりの強さを感じます。
3.時代と共に変化していく行事
川俣の自治会長(区長)も「祭りの終わりは地域の終わり」と言っていますが、各地区でも祭りや行事を継続するため様々な変化が見られます。
土呂部(どろぶ)地区では、地元宇都宮大学生が獅子舞を一緒に盛り上げています。
日蔭(ひかげ)地区では女性が笛の吹き手をやってお祭りを支えています。
高校生ボランティアでも川俣の獅子舞の時に警護(獅子舞のガードマン役)を任されました。
元服式や獅子舞のように何百年も続く伝統を守ることも大切です。続ければ続けるほどそれが住民の誇りになり、地域の文化になります。
心縁祭のように今までにない新しい行事も地域を盛り上げます。高校生たちは何度も川俣に足を運び、川俣住民と一緒に笑い、ゴハンを食べて、たくさんの経験を共有しながら心縁祭にたどり着きました。
そんな高校生たちが、いつか川俣住民と酒を酌み交わす日がくると思うと…今から楽しみです。